【イン・ザ・トール・グラス －狂気の迷路－】スリラー・ホラー映画

カナダ 2019年
監督：ヴィンチェンゾ・ナタリ
主演：パトリック・ウィルソン   ハリソン・ギルバートソン   レイチェル・ウィルソン   ティファニー・ヘルム   ライズラ・デ・オリヴェイラ   エイブリー・ウィテッド

助けを呼ぶ少年の声を聞き、高い草が生い茂る広い草むらに足を踏み入れた妊婦とその兄。だが、やがて互いを見失い、そこから出られなくなる。

スティーヴン・キングとジョー・ヒルの共著小説を原作とした、まさに観る者の精神を蝕むような心理ホラーです。この映画は、広大な草むらという一見のどかな設定の中に、出口のない悪夢と化した迷宮を作り出しています。
物語は、妊娠中の女性ベッキーと彼女の兄カルが、道端の背の高い草むらから助けを求める少年の声を聞いたことから始まります。親切心から草むらの中へ足を踏み入れた彼らは、すぐにその場所が通常の物理法則から逸脱していることに気づきます。声の主である少年を見つけようとするものの、距離感が狂い、声は常に遠ざかり、戻る道も分からなくなってしまうのです。
この映画の最大の魅力は、その閉所恐怖症的な雰囲気と、じわじわと忍び寄る恐怖にあります。広々とした草むらでありながら、視界は遮られ、常に何かに追われているかのような感覚に陥ります。GPSも携帯電話も通じず、彼らが頼れるのは自分たちの感覚だけ。しかし、その感覚すらも草むらによって歪められていくのです。
登場人物たちは、時間の感覚や方向感覚を失い、お互いを信頼することすら困難になっていきます。絶望的な状況の中で、人間の本性が露わになり、極限状態での心理的な葛藤が深く描かれています。何が現実で、何が幻覚なのか、観客もまた彼らと共に混乱に引き込まれます。