【VESPER／ヴェスパー】SF・アドベンチャー映画

リトアニア/フランス/ベルギー 2022年
監督：クリスティーナ・ブオジーテ/ブルーノ・サンペル
主演：ラフィエラ・チャップマン   エディ・マーサン   ロージー・マキューアン   リチャード・ブレイク   メラニー・ゲイドス   エドモンド・デーン

地球の生態系が崩壊した近未来で、寝たきりの父と２人で暮らす13歳の少女ヴェスパー。彼女は城塞都市の女性カメリアとの出会いを機に、壮大な冒険に繰り出していく。

この映像世界は、SFでありながらもどこかファンタジー的な雰囲気をまとっています。それはまるで、宮崎駿監督の作品『風の谷のナウシカ』を彷彿とさせる、有機的で生命力に満ちた世界観です。毒を持つ植物や、未知の生物たちが息づくその世界は、観客を未知の領域へと誘い、想像力を掻き立てます。
一方で、この映画は、その美しいビジュアルとは裏腹に、厳しい現実を描いています。一部の富裕層は「シタデル」と呼ばれる巨大な城塞都市に閉じこもり、多くの人々は外の世界で貧困にあえいでいます。主人公の少女ヴェスパーも、寝たきりの父親を抱え、厳しいサバイバル生活を送っています。
この作品の物語は、いわゆる「ハリウッド的な派手な展開」を期待すると、少し肩透かしを食らうかもしれません。アクションや壮大な冒険活劇ではなく、ヴェスパーという一人の少女の視点を通して、この世界の理不尽さや、小さな希望を描いていくスタイルです。物語は静かに、そして淡々と進んでいきます。そのため、人によっては「退屈に感じる」「展開が遅い」といった感想を抱く方もいるかもしれません。