出典:映画.com
【サウンド・オブ・サイレンス】
イタリア 2023年
監督:アレッサンドロ・アントナチ/ダニエル・ラスカー/ステファノ・マンダラ/T3
主演:ペネロペ・サンギオルジ ロッコ・マラッツィタ ルチア・カポラーソ ダニエル・デ・マルティノー Sandra Pizzullo
ニューヨークで歌手を目指しているエマは、オーディションに落ち続け自信を失っていた。そんな中、実家で暮らす父親が入院したという報せが入り、恋人のセバと一緒に故郷のイタリアへと向かう。父親は面会謝絶となっており、病院で居合わせた母親に理由を聞くが、急に暴れ出した父親から殺されそうになったと震えるばかりだった。その夜、実家に泊まることになったエマは、ガラクタ修理が趣味だった父親の隠し部屋で、古いラジオを見つける。すると、突然ラジオがひとりでに音楽を流し始める。不審に思いつつもスイッチを切るが、その瞬間何かの気配を感じ取る。エマがスイッチを入れて再び音楽が流れ始めると、“それ”は確実に目の前に現れた―。
出典:映画.com
「サウンド・オブ・サイレンス」は、静寂が生み出す独特の恐怖を追求したホラー作品です。まず引き込まれるのは、その音に対する徹底したこだわり。音が鳴ることで何かが起こる、というシンプルな設定が、観客の聴覚を研ぎ澄ませ、日常に潜む音の危険性を改めて感じさせます。
物語は、主人公が故郷の実家で経験する奇妙な現象を中心に展開していきます。古びた家屋の雰囲気と相まって、画面に映るものだけでなく、その場に漂う空気や気配までもが、じわじわと不気味さを増していく演出が見事でした。音と静寂のコントラストが巧みに使われており、次に何が起こるのかという緊張感が途切れることなく続きます。
いわゆる「ジャンプスケア」だけで驚かせるような単純なホラーとは一線を画し、心理的な不安を煽る演出が多い印象です。登場人物たちが音を立てまいとする姿や、その中で追い詰められていく様子は、観ているこちらも息を詰めてしまうほど。
エンディングについては、観終わった後に考察したくなるような余韻が残ります。ホラー映画ではありますが、単なる恐怖体験にとどまらず、人間の内面や過去の因習といったテーマも感じさせる部分がありました。

評価90点
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