【死霊館】ホラー映画

アメリカ 2013年
監督：ジェームズ・ワン
主演：ベラ・ファーミガ   パトリック・ウィルソン   リリ・テイラー   ロン・リヴィングストン   シャンリー・カズウェル   ヘイリー・マクファーランド   ジョーイ・キング   マッケンジー・フォイ   カイラ・ディーヴァー    シャノン・クック

エドとロレーヌのウォーレン夫妻は、数々の心霊現象を解決してきたゴーストハンター。そんな夫妻のもとに、ある日ひとつの相談が持ち込まれる。それはロードアイランドの人里離れた一軒家に引っ越したペロン一家が不気味な怪現象に悩まされているというものだった。そして、夫妻はさっそく現地へと向い、調査を開始する。40年もの間、関係者全員が口を閉ざし続けた戦慄の実話！

物語は、1970年代に実際に起きたとされている超常現象を、有名な心霊研究家夫妻であるエド＆ロレイン・ウォーレン夫妻の視点から描いています。彼らが呼び出されたのは、広大な敷地に建つ古い一軒家。新しくそこへ引っ越してきた一家が、次々と奇妙で不可解な現象に襲われていく様子が、非常に丁寧に、そしてじわじわと描かれていきます。
この映画の特筆すべき点は、安易な「ジャンプスケア」に頼りすぎていないことです。もちろん、効果的に使われている場面はありますが、それ以上に観客の心理を巧みに操る演出が秀逸です。たとえば、カメラワークはまるでそこに何かがいるかのように、視線の先をゆっくりと追っていきます。音響もまた、不気味な物音、床がきしむ音、囁き声など、細部にまでこだわり抜かれており、視覚と聴覚の両方から恐怖を植え付けます。特に、画面の端っこに映り込む何気ない影や、遠くでかすかに聞こえる物音など、観客の想像力を刺激する仕掛けが随所に散りばめられています。
そして何より、この映画を単なるホラー映画以上のものにしているのは、登場人物たちへの深い共感です。心霊現象に苦しむ一家の悲痛な叫びや、彼らを救おうと奮闘するウォーレン夫妻の姿は、観客の感情に強く訴えかけます。彼らはただの「被害者」や「ヒーロー」ではなく、それぞれに葛藤や苦悩を抱えた人間として描かれています。特に、この映画で初めて描かれるウォーレン夫妻のキャラクター造形は素晴らしく、超常現象のプロでありながら、互いを深く信頼し、愛情を育む二人の姿は、ホラーというジャンルの中で一種の「希望」や「安心感」を与えてくれます。この人間ドラマがあるからこそ、クライマックスの恐怖がより一層際立つのです。