【エスケーピング・マッドハウス】スリラー映画

アメリカ 2019年
監督：カレン・モンクリーフ
主演：クリスティナ・リッチ   ジュディス・ライト   ジョシュ・ボウマン   アンニャ・サヴィッチ   マーク・ヒルドレス

「私はネリー・ブラウン」。NYのブラックウェル島精神科病院に収容された女性が唯一覚えていたのは自分の名前だけ。彼女の正体は、不穏な噂のある病院の実態を取材しようと潜入した記者だった。やがて真実が暴かれようとした時、壮絶な仕打ちが彼女を襲う。

この映画は、単なるスリラーやサスペンスの枠を超えて、人間の尊厳、そして狂気と正気の境界線について深く問いかける、非常に示唆に富んだ作品だと思います。
まず、特筆すべきは、その圧倒的な映像美です。マッドハウスと称される閉鎖的な空間は、単なる不気味な場所として描かれるのではなく、どこか芸術的な美しささえ感じさせるような、独特な世界観を構築しています。光と影のコントラスト、そして登場人物たちの表情を捉えるカメラワークが、彼らの内面の葛藤や感情を鮮やかに映し出しており、観客はまるでその世界の中に閉じ込められたかのような感覚を味わいます。
そして、何よりも素晴らしいのが、登場人物たちの繊細な心理描写です。主人公が抱える過去のトラウマ、そして彼女を取り巻く人々がそれぞれに抱える闇が、丁寧に、そしてリアルに描かれています。誰が狂っていて、誰が正気なのか。その境界線は曖昧で、観客は物語が進むにつれて、自分自身の常識や価値観を揺さぶられることになります。