出典:映画.com
【108時間】
スペイン/アルゼンチン/ウルグアイ 2018年
監督:グスタボ・エルナンデス
主演:ベレン・ルエダ エバ・デ・ドミニシ ヘルマン・パラシオス マリア・アルフォンサ・ロッソ ナタリア・デ・モリーナ Eugenia Tobal
ある劇団が新作舞台の準備として、今は廃屋となっている精神病棟を使うことに。その舞台は昔の前衛的な演劇グループが創作したもので、108時間眠らずにいた女性の悲劇のストーリー。台本はあるものの、演出家のアルマは役者らに実際に眠らずに過ごさせて、登場人物の心理に近付くように求めた。主役の座を狙うビアンカは怪訝思いながらもライバルの役者仲間らと不眠に挑むが、幻覚に襲われたり恐ろしい体験が続き心身ともに変になっていく。 またビアンカらが演じる役柄の女性のことを調べると108時間起き続け、そこから変になってしまったという事実を知る。限界と恐怖を感じ諦めようとするビアンカ。だが、その時はもう108時間になる手前だった。そして、ついに衝撃の恐怖が待ち受けるその時が訪れる・・・。
本作の核となる設定は、極めてシンプルでありながら、観客の想像力を掻き立てる強烈なものです。それは「108時間の断眠」という、人間の精神と肉体の限界に挑む行為。ある劇団が新作舞台の役作りのため、かつて曰く付きの場所であった廃墟の精神病院で稽古を行う、という導入から、すでにゾクゾクするような不穏さが漂います。
この映画の特筆すべき点は、「劇中劇」の要素が恐怖を倍増させていることです。舞台の役柄になりきるため、演出家は俳優たちに「108時間眠らない」という過酷な要求をします。これは単なる役作りを超え、登場人物の心身の崩壊を追体験させるという、狂気的なメソッドです。
主人公の若手女優ビアンカが、ライバルたちと共に極限の不眠状態に身を置くことで、物語は一気に加速します。この「断眠」という設定は、ホラーやスリラーで描かれる「閉鎖空間」や「異常な状況」の中でも、特に内側から崩れていく恐怖を際立たせます。疲労がピークに達した時、何が現実で何が幻覚なのか、その境界線が曖昧になっていく過程が、観客にも生理的な不快感と緊張感を与えます。
廃墟となった精神病院というロケーションも秀逸です。過去の悲劇的な記憶と、現在進行形の不眠による狂気が交錯し、場所自体が持つ負のエネルギーが増幅されているように感じられます。物語が進むにつれて、ビアンカが追体験しているものが、単なる役作りの範疇を超えた、より根源的な恐怖へと繋がっていく予感が高まります。
まとめとして、『108時間』は、斬新な設定と、その設定を最大限に活かしたロケーションと演出によって、独特な恐怖体験を提供する作品です。ホラーやスリラーがお好きな方、特に心理的な追い詰められ方や内面的な狂気を描いた作品に興味がある方には、刺激的な体験となるでしょう。ただし、設定が設定なだけに、鑑賞後はしっかりと休息を取ることをおすすめします。

出典:映画.com




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