出典:映画.com
【サラの鍵】
フランス 2010年
監督:ジル・パケ=ブランネール
主演:クリスティン・スコット・トーマス メリュジーヌ・マヤンス ニエル・アレストリュプ フレデリック・ピエロ ミシェル・デュショーソワ ドミニク・フロ ナターシャ・マスケヴィッチ ジゼル・カサデサス エイダン・クイン
パリで暮らすジャーナリストのジュリアは、自分たちの住むアパートのかつての住人が、1942年に起きたユダヤ人迫害事件を体験していた事実を知る。彼女は悲劇の中心人物である当時10才だった少女サラのその後を調べるが、複雑な事情が明らかになり…。
「サラの鍵」は、第二次世界大戦下のフランスの暗い過去と、それが現代に生きる人々の心に落とす影を、見事に描き出した秀作です。これは単なる戦争映画でも、歴史的な記録映像でもなく、観客の心に強く訴えかけるヒューマン・ドラマです。
映画の構成は、1942年のパリで起きたユダヤ人一斉検挙(ヴェル・ディヴ事件)に巻き込まれた少女サラ・スタージンスキーの物語と、現代のジャーナリストジュリア・ジャーモンドが、事件の真実を追う過程が交互に描かれます。この二つの時間軸が、一つの鍵と、ある家族の運命を通じて、痛ましくも強く結びついていきます。
1942年のパートは、観ていて胸が締め付けられるほどに辛く、目を覆いたくなる現実を映し出します。サラは、幼い弟を守るために取ったある行動が、彼女自身の人生を決定づけてしまいます。少女の純粋な愛と、歴史の残酷さ、そしてそこから生まれる悲劇が、静かでありながらも強烈に観客に突き刺さります。
一方、現代のパートでは、ジュリアがパリでアパルトマンのリフォームをきっかけにサラの存在を知り、彼女の足跡を辿り始めます。この調査を通じて、ジュリアは単なる記事の素材探しを超え、過去の罪と向き合い、自らの人生観や家族の歴史をも見つめ直すことになります。彼女の旅は、観客にとっても過去の出来事が「他人事ではない」と感じさせるための、重要な架け橋となります。
本作の最大の魅力は、歴史の巨大な悲劇を描きながらも、焦点を一人の少女の運命に絞り込んでいる点です。歴史の教科書では伝わらない、極限状況における人間の行動、恐怖、そしてわずかな希望を探し求める姿が、鮮烈に描かれています。

出典:映画.com




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