出典:Prime video
【スナイパー コードネーム:レイブン】
ウクライナ 2022年
監督:マリアン・ブーシャン
主演:パーヴェル・アルドシン マリナ・コシキナ アンドリー・モストレーンコ オレグ・ドラック
ウクライナのドンパス地方での戦争がはじまると、物理学者のミコラは、妊娠中の妻を過激派に殺され、家を焼き払われる。非暴力・平和主義者だったミコラは、怒りにかられ、自らの主義を翻し、ウクライナ軍に入隊する。復讐心を燃やすミコラは過酷な訓練に耐え、みるみるうちにエリート狙撃手となっていく。やがて戦争が激化する中、自分を育ててくれた先輩狙撃手もロシア軍のスナイパーに殺され、一層復讐の誓いを胸に秘めたミコラは、千載一遇のロシア兵狙撃作戦への参加の機会を得る。そしてスナイパー達の息詰まる狙撃合戦へと突入する。
この作品は、単なる「狙撃手の活躍を描くアクション映画」という枠組みを超え、プロフェッショナルの持つ究極の孤独と、一瞬の判断が命運を分ける世界を克明に描き出した、緊張感あふれるミリタリー・サスペンスです。
主人公のコードネーム「レイブン」が示すように、彼は獲物を定めると決して逃さない、冷徹かつ精密なプロフェッショナルです。この映画の最大の魅力は、彼の人間性を深く掘り下げながらも、その任務遂行能力のリアリティを決しておろそかにしない点にあります。
レイブンは、作戦開始から完了まで、常に極限のプレッシャーにさらされています。彼の行動原理は、感情ではなく、あくまで状況判断と計算に基づいています。この抑制された描写が、観客に彼の内面にある激しい葛藤や過去の重さを想像させ、物語に深みを与えています。私たちは、彼が単なる「引き金を引く機械」ではなく、重い責任と使命感に囚われた一人の人間であることを知るのです。
本作の演出は、多くの派手なアクション映画とは一線を画します。スナイパーの仕事の大部分を占める「潜伏」「観察」「待機」のフェーズが、非常に丁寧かつ緻密に描かれています。
特に、照準器越しに見る世界は、観客をレイブンの精神状態に引き込みます。彼はただ見ているのではなく、獲物の心理、環境の変化、すべてのリスクを読み解いているのです。この知的なプロセスが、本作を単なる射撃技術の見せ物に終わらせていません。

出典:Prime video





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