【モンスターズ 悪魔の復讐】 クライム・スリラー映画

アメリカ 2018年
監督：クレイグ・マクニール
主演：クリステン・スチュワート   クロエ・セヴィニー   キム・ディケンズ   フィオナ・ショウ   デニス・オヘア   ジェフ・ペリー    ジェイミー・シェリダン   ジェイ・ヒューグリー

1892年。厳格な父親の規則のもと、リジーはマサチューセッツ州で静かな生活を送っている。そんな彼女は、女中のブリジットと強い絆と愛で結ばれていた。しかし、彼女たちの秘密の関係は、暗い結末を迎える。

『モンスターズ 悪魔の復讐』は、その邦題からSFやホラーを連想されるかもしれませんが、実際は全く異なるジャンルの作品です。これは、19世紀末にアメリカで実際に起きた未解決の殺人事件、「リジー・ボーデン事件」を題材にした、静かで心理的なドラマ、そしてサスペンス要素を持つ映画です。
まず引き込まれるのは、当時の閉鎖的で抑圧的な社会の雰囲気、そしてその中で生きる女性たちの苦悩が丁寧に描かれている点です。主人公リジー・ボーデンと、彼女を取り巻く人間関係、特に新しいメイドとの間に芽生える感情が、物語の重要な軸となっています。
派手なアクションや驚くような展開が次々と起こるわけではありません。しかし、登場人物たちの表情や仕草、そして交わされる言葉の端々から、緊迫感と不穏な空気がひしひしと伝わってきます。観客は、彼女たちの日常に潜む抑圧と葛藤を共有し、やがて来るであろう「何か」を予感させられます。
主演のクロエ・セヴィニーとクリステン・スチュワートの演技が非常に素晴らしく、二人の間の繊細な関係性と、内に秘めた感情の揺れ動きを見事に表現しています。セリフ以上に、視線や沈黙が多くのことを語りかけてくるような、深い演技合戦が展開されます。