出典:Prime video
【ラッキー】
アメリカ 2020年
監督:ナターシャ・ケルマーニー
主演:ブレア・グラント Leith M. Burke Dhruv Uday Singh Hunter C. Smith Chivonne Michelle ヤスミン・アル=ブスタミ カウザー・モハメド ラリー・セダー
自宅に侵入した覆面男に襲われ、何とか撃退したメイ。夫が「毎晩僕たちを殺そうとする男だ」とつぶやき、その言葉の意味を問い詰めたところ、彼は逆上し家を出て行ってしまう。残されたメイはそれから毎夜、覆面男の襲撃に遭うことになるが…。
映画『ラッキー』は、じわじわと、引き込んでいくサスペンス・スリラーです。この映画は、ホラー映画の持つ典型的な怖がらせ方を避け、むしろ日常に潜む不気味さ、そしてそれが次第に侵食していく様を丁寧に描いています。そのため、いわゆる「ジャンプスケア」を期待して観ると肩透かしを食らうかもしれませんが、心理的な恐怖、そして社会的なテーマに深く踏み込んだ作品を求めている方には、強く響くことでしょう。
この映画の秀逸な点は、この不気味な出来事が、果たして本当に起こっていることなのか、それともマギーの妄想なのか、その境界線を曖昧に描き続けていることです。観客は、マギーの視点を通して、彼女の感じる恐怖を追体験することになります。彼女が感じる不安は、やがて現実の出来事と結びつき、彼女を追い詰めていきます。しかし、最も恐ろしいのは、マギーが助けを求めても、周囲の人間が彼女の言葉を真剣に受け取らないことです。夫は「気のせいだ」と慰め、警察は「証拠がない」と取り合ってくれません。この、誰にも信じてもらえない孤立感こそが、この映画の最大の恐怖源と言えるでしょう。
また、この作品は、単なるホラーやスリラーにとどまらず、現代社会が抱える問題、特に女性が直面する困難について鋭い洞察を示しています。マギーが直面する恐怖は、多くの女性が日常的に感じる「漠然とした不安」や「見えない圧力」のメタファーとして機能しているように感じられます。女性が声を上げても、その声が聞き入れられず、軽視されるという現実。そして、その結果として、孤立し、自分自身さえも信じられなくなっていく様が、痛々しいほどに描かれています。

出典:Prime video
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