出典:Netflix
【ザ・サイレンス 闇のハンター】
アメリカ/ドイツ 2019年
監督:ジョン・R・レオネッティ
主演:キーナン・シプカ スタンリー・トゥッチ ミランダ・オットー ジョン・コーベット ケイト・コルベット カイル・ハリソン・ブライトコフ
人間の存在を音で感知し襲撃するどう猛な飛行生物が突如現れ、世界が混とんとする中、耳の不自由な少女は家族とともに、安全な場所を探して街を出る。
本作の最大の魅力は、その設定のシンプルさと、そこから生まれる極限の緊張感にあります。世界中に突如として出現した「ヴェスプ」と呼ばれる未確認生物は、視覚ではなく「音」に反応して人間を襲います。
この設定が、映画全体を支配する「静寂」という名の重圧を生み出しています。
音の演出の逆転: 通常、ホラー映画では効果音や大音響が恐怖を煽りますが、この映画では音を出すこと自体がタブーとなります。観客は、登場人物が少しでも物音を立てるたびに、「来るぞ!」という予感にゾッとさせられ、スクリーンの中の彼らと一緒に息を潜める体験をすることになります。
音を立てられない状況は、単にクリーチャーから逃げるというだけでなく、生存者間にコミュニケーションの葛藤を生み出し、観客の心理的なプレッシャーを増幅させます。
物語の中心となる家族構成が、このサバイバル劇に深いテーマ性をもたらしています。主人公のティーンエイジャー、アリーは聴覚障害を持っており、家族は普段から手話でコミュニケーションを取っています。この設定が、極限状況下で思わぬ「強み」へと転じます。
静かな優位性: 全人類が静寂を強いられる中で、手話という静かな会話手段を持つ彼らは、他の生存者にはない生存の優位性を持ちます。これは、非常時における「ハンディキャップ」と「能力」の定義を逆転させる、非常にユニークで示唆に富んだ視点です。
台詞が少ない分、俳優陣は表情、仕草、手話といった非言語的な手段で感情を表現する必要があります。特に、愛する家族を守ろうとする父親(スタンリー・トゥッチ)の決意、そして、娘アリーの不安と強さが入り混じった眼差しは、観客の胸に強く響くでしょう。

出典:Netflix





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