出典:Prime video
【ゲーム】
アメリカ 1997年
監督:デヴィッド・フィンチャー
主演:マイケル・ダグラス ショーン・ペン デボラ・カーラ・アンガー ジェームズ・レブホーン ピーター・ドゥナット キャロル・ベイカー アンナ・カタリーナ アーミン・ミューラー=スタール チャールズ・マーティネー エリザベス・デネヒー
投資銀行を経営する大富豪のニコラスは、48歳の誕生日に疎遠だった弟のコンラッドと再会する。コンラッドからのプレゼントで、ニコラスはCRSという会社が提供するゲームに参加することに。だが、その時から彼の周りで不可解な出来事が続発する。
映画『ゲーム』(1997年)は、公開から四半世紀以上が経過した今なお、サスペンス映画の金字塔として語り継がれる一作です。この映画が持つ「得体の知れない魅力」を、物語の核心に触れることなく、いくつかの切り口から深く掘り下げてみます。
この映画の主人公、ニコラス・ヴァン・オートンは、すべてを手にしながら心は凍りついたような大富豪です。彼が弟から贈られた「CRS社のゲーム参加権」は、単なる娯楽ではありません。
このゲームの恐ろしい点は、それが「彼のためだけに設計されている」という点です。彼の過去、トラウマ、性格、そして彼が最も守りたいプライドを完璧に調査した上で、世界が作り変えられていきます。
周囲に人が溢れているはずなのに、誰も信じられない。自分を取り囲む世界そのものが「自分を標的にしている」という強烈なパラノイア的体験を、ニコラスの肩越しに追体験することになります。
些細な会話、道行く人の視線、テレビから流れるニュース。日常の風景の中にほんの数パーセントの「違和感」を混ぜ込むことで、観客を「何かがおかしいが、確証が持てない」という、最も不安な精神状態に固定し続けます。
ひとつの謎が解けた瞬間に、それがさらに大きな「嘘」の一部であったことが判明する。その繰り返しにより、ニコラスも、何を基準に現実を判断すればいいのか分からなくなっていきます。
フィンチャーは「映画を観るという行為そのものが、一種のゲームである」と突きつけてきます。私たちは、スクリーンの中のニコラスと同様に、監督が仕掛けたルールに翻弄されるプレイヤーの一員となってしまうのです。
一見、悪趣味なドッキリを巨大化したようなスリラーに見えますが、その根底には非常に重厚な人間ドラマが流れています。
完璧な人間などいない。ニコラスが社会的地位や資産という「鎧」を剥ぎ取られ、ただの一人の人間にまで追い詰められたとき、彼が何を見出すのか。これは、冷徹なビジネスマンの「再生」を描いた物語としても非常に完成度が高いのです。

出典:Prime video





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