出典:Prime video
【ミリオンダラー・スティーラー】
アルゼンチン 2020年
監督:アリエル・ウィノグラード
主演:ギレルモ・フランセーヤ ディエゴ・ペレッティ ルイス・ルケ パブロ・ラゴ ラファエル・フェロ
2006年にアルゼンチンで実際に起きた銀行強盗事件を題材に描き、本国アルゼンチンで大ヒットを記録したクライムドラマ。画家としての成功を夢見ながら満たされない日々を送っていたフェルナンドは、ある犯罪計画を思いつく。それは、資産家たちの莫大な財産が保管されている巨大貸金庫へ地下60フィートの下水道から侵入し、白昼堂々と盗み出すという大胆な計画だった。資金提供者であるコソ泥のマリオや悪友マルシアーノら仲間たちとともに念入りな下調べや準備を進め、ついに決行の日を迎えるが……。
この作品は、単なる「強盗モノ」というジャンルの枠に収まりきらない、「人生の逆転」を賭けた切実な人間賛歌であり、同時に残酷な寓話でもあります。
本作が他のクライムアクションと一線を画すのは、主人公たちが決して「根っからの悪党」ではない点にあります。彼らはそれぞれの分野で卓越したスキルを持ちながら、社会の仕組みや不条理によって隅に追いやられた人々です。
彼らが企てる計画は、単なる金銭欲というよりも、「自分たちの価値を認めない世界への意趣返し」のような側面を持っています。プロフェッショナルがその知恵と経験を、あえて「正道」から外れた場所に注ぎ込むとき、そこには奇妙な美しさと、観客を共犯者にするような高揚感が宿ります。
派手なカーチェイスや銃撃戦に頼るのではなく、本作は「情報の隙間」や「心理的な駆け引き」で物語を牽引します。
強盗映画の醍醐味は「仲間との絆」ですが、本作はその絆がいかに脆く、そして同時にいかに強固であるかを冷徹に描き出します。
極限状態に置かれた人間が、隣にいる仲間を信じ抜けるのか、あるいは土壇場でエゴを剥き出しにするのか。登場人物たちの視線が交錯するたびに、言葉以上の裏切りや献身が示唆され、観る者は常に「誰を信じるべきか」というジレンマに立たされます。この心理的な揺さぶりこそが、本作の真の面白さと言えるでしょう。
「巨額の富」という象徴を前にしたとき、彼らが何を選択し、何を捨て去るのか。そのプロセスは、単なるフィクションの出来事として片付けられない、私たち自身の日常にも通ずる「選択の重み」を問いかけてきます。ラストに向けて加速するドラマは、単なる成功か失敗かという結果を超え、「彼らがその後、どう生きていくのか」という深い余韻を残します。

出典:Prime video





コメント