出典:Prime video
【87分の1の人生】
アメリカ 2023年
監督:ザック・ブラフ
主演:フローレンス・ピュー モーガン・フリーマン セレステ・オコナー モリー・シャノン チナザ・ウチェ
ダニエルは、前途有望な若き女性アリソンが起こした想像を絶する悲劇の中で娘を失ってしまった。2人は許しを経て、友情を育み、共に希望を見つけていく。
この作品が観る者の心に刻んだものは、単なる感動という言葉では片付けられない、もっと鋭利で、かつ温かい「生への執着」だったのではないでしょうか。
タイトルの「87分の1」という具体的な数字。物語はこの数字を軸に、私たちの人生を「効率」や「確率」、あるいは「価値」という物差しで測ろうとします。
抽象的な「死」や「生」ではなく、数式や時間という逃げ場のない単位で突きつけられることで、観客は否応なしに自分の「持ち時間」を意識させられます。
役者陣の演技も、叫び散らすようなエモーショナルさではなく、内側に高熱を帯びた「静かな独白」のようであり、それがかえって観客一人ひとりの個人的な記憶を呼び覚ます装置となっていました。
この物語の核にあるのは、「選ぶこと」と「選ばれること」の残酷さです。
社会にとっての正解と、個人にとっての幸福。その埋めようのない溝を、物語は安易なハッピーエンドで埋めようとはしません。
登場人物たちの決断に対し、最初は「なぜ」と疑問を抱いても、時間が経つにつれ「自分も同じ立場なら、あるいは……」と、自己の倫理観が揺さぶられる感覚。
この「居心地の悪さ」こそが、この舞台が提示した最大の誠実さだったように思います。
「人生は短い」という手垢のついた教訓を、これほどまでに生々しく、痛烈に、そして優しく突きつけてくれる作品は稀有です。2023年という、ようやく人々が「日常」を取り戻し始めた時期にこの作品に出会えたことは、多くの人にとって一種の救いとなったはずです。

出典:Prime video





コメント