出典:映画.com
【ノスフェラトゥ】
アメリカ/イギリス/ハンガリー 2024年
監督:ロバート・エガース
主演:ビル・スカルスガルド ニコラス・ホルト リリー=ローズ・デップ アーロン・テイラー=ジョンソン エマ・コリン ラルフ・アイネソン サイモン・マクバーニー ウィレム・デフォー
不動産業者のトーマス・ハッターは、仕事のため自身の城を売却しようとしているオルロック伯爵のもとへ出かける。トーマスの不在中、彼の新妻であるエレンは夫の友人宅で過ごすが、ある時から、夜になると夢の中に現れる得体の知れない男の幻覚と恐怖感に悩まされるようになる。そして時を同じくして、夫のトーマスやエレンが滞在する街にも、さまざまな災いが起こり始める。
ロバート・エガース監督による『ノスフェラトゥ』は、単なるリメイクという枠を超え、ゴシック・ホラーの原点に対する「最も美しく、最も呪われたラブレター」のような作品です。
エガース監督といえば『ウィッチ』や『ライトハウス』でも見せた徹底的な時代考証と映像美が特徴ですが、今作でもそのこだわりは神がかっていました。
デジタル撮影では決して出せないような、吸い込まれるような「真の闇」が表現されています。その闇の中から、何かがゆっくりと形を成していく恐怖は、現代のジャンプスケア(急に驚かせる演出)とは一線を画す、格調高い恐ろしさです。
最も注目すべきは、やはり伯爵を演じたビル・スカルスガルドでしょう。
1922年版のマックス・シュレックが作り上げた不朽のイメージを尊重しつつ、全く新しい「捕食者」としての気味の悪さを生み出しています。
彼は単なるモンスターではなく、数百年という孤独に耐えてきた「病的な執着」を感じさせます。特殊メイクも相まって、彼が画面に映るたびに劇場の空気が一段階冷え込むような感覚を覚えます。
恐怖の対象であるはずの存在に、どこか抗えない引力を感じてしまう人間の心理が、非常に繊細に描かれています。
現実と悪夢の境界線が曖昧になっていく過程は、観客自身が熱病に浮かされているかのような錯覚に陥るほど、官能的で不穏です。
この映画は、昨今のスピーディーな映画に慣れている人には少し「重い」と感じるかもしれません。しかし、じっくりと時間をかけて構築される「死の予感」を味わうには、これ以上ない傑作です。

出典:映画.com





コメント