【NOCEBO/ノセボ】ホラー・サスペンス映画

ホラー映画
像画出典:Prime video
出典:映画.com

【NOCEBO/ノセボ】

詳細

アイルランド/フィリピン/イギリス/アメリカ 2022年
監督:ロルカン・フィネガン
主演:エヴァ・グリーン   マーク・ストロング   チャイ・フォナシエ   ビリー・ガドスドン  キャシー・ベルトン

ストーリー

ファッションデザイナーとして名を馳せるクリスティーンは、夫のフェリックスと幼い娘のボブスとダブリン郊外で悠々自適に暮らしていた。ある日、仕事中にクリスティーンはダニに寄生された犬の幻影に襲われる。8ヶ月後、クリスティーンは筋肉の痙攣、記憶喪失や幻覚などを引き起こす原因不明の体調不良に悩まされていた。そんな彼女の前に、ダイアナと名乗るフィリピン人の乳母が現れるのだが…。

映画『NOCEBO/ノセボ』予告編
感想

​ロルカン・フィネガン監督が仕掛ける心理ホラー・サスペンス『NOCEBO/ノセボ』は、単なる恐怖体験で終わらない、非常に多層的で深みのある作品です。前作『ビバリウム』で日常に潜む不条理を描き切った監督が、今回は「裕福な暮らし」の裏側に潜む暗部と、人間心理の脆さを、ねっとりとした不気味さで炙り出します。
まず、この映画のタイトルにもなっている「ノセボ効果」という概念が、物語全体に張り巡らされています。これは、治療に効果がないと分かっている物質(偽薬)を投与しても、「害がある」と信じ込むことで実際に体調に悪影響が生じる現象のことです。
主演のエヴァ・グリーンが体現するクリスティーンは、肉体的・精神的な衰弱と、成功者としての強いエゴが混在する、非常に複雑なキャラクターです。彼女が抱える病と不安、そして見境なくダイアナの民間療法にすがりつくヒステリックな姿は、観客に強い印象を与えます。彼女の持つ独自の美しさが、追いつめられていく過程で不穏で痛々しいものへと変貌していく様は圧巻です。
対する乳母ダイアナを演じるチャイ・フォナシエの存在感は、スクリーンを一瞬にして支配します。彼女は多くを語りませんが、その静かで神秘的、そしてどこか悲しみを帯びた佇まいが、西欧的な空間に土着的な「異物感」を注入し、強烈な緊張感を生み出しています。この二人、「西洋の病める成功者」と「東洋の謎めいた治癒者」の間に生まれる支配と依存の関係性は、本作の最大のサスペンス要素です。
『NOCEBO/ノセボ』が、他のホラー映画と一線を画しているのは、そのテーマが単なるオカルトやサスペンスに留まらない点です。
この構造的な搾取と、家庭に入り込んだダイアナがもたらす恐怖が結びつくことで、単なる個人的な呪いの話ではなく、「グローバルな因果応報」のような、より大きなスケールの物語として昇華されていきます。この重層的なテーマこそが、鑑賞後に深く考えさせられる要素となるでしょう。

3.8
出典:映画.com

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