【パージ】スリラー映画

アメリカ 2013年
監督：ジェームズ・デモナコ
主演：イーサン・ホーク   レナ・ヘディ   マックス・バークホルダー   アデレード・ケイン  エドウィン・ホッジ   リース・ウェイクフィールド   トニー・オーラー   アリヤ・バレイキス   トム・イー   クリス・マルケイ    ティシャ・フレンチ

犯罪が激増し、刑務所は犯罪者であふれかえるアメリカ。政府は対策として年に１度、12時間だけ殺人を含むいかなる犯罪も認めることにする。警察は出動せず、病院は医療活動を行わない。人々は一夜だけ罪の意識を感じることなく過ごせるのだ。暴力と犯罪が横行する夜、ジェームズ・サンディン（イーサン・ホーク）の家に見知らぬ男が助けを求めにやってくる。

『パージ』は、その設定の恐ろしさと問いかけの深さが際立つ、非常に見応えのあるスリラー作品です。この映画の最大の魅力は、政府が年に一度、12時間だけ全ての犯罪を合法化するという「パージ」という制度のアイデアそのものにあります。これは単なるホラー映画のギミックではなく、もし人々が法的な制約から解放されたらどうなるか、という人間の本質に深く切り込む思考実験として機能しています。
物語は、裕福な家庭が自宅の厳重なセキュリティシステムの中で安全を確保しようとする一夜を描いています。しかし、家族の一員が外で助けを求める見知らぬ人物を家に入れてしまったことから、彼らの「安全なシェルター」は一転して最大の危機に晒されます。
監督のジェームズ・デモナコは、閉鎖された空間での心理的な緊張感を見事に描き出しています。イーサン・ホークとレナ・ヘディ演じる夫婦が、命の危険だけでなく、家族間の信頼や道徳的な判断に迫られる様は、観客にも「自分ならどうするか」という問いを突きつけます。派手なアクションよりも、追い詰められた状況での人々の葛藤や、徐々に崩壊していく日常の様子に焦点を当てているため、非常にリアリティがあり、息が詰まるような緊体感が持続します。